残された文字が、あとから来る筆画を持ち去る
自由変数: 一度の保存が、あとからどれだけの可読な空間を得るかseed: 202608011
語が画面の縁から通り過ぎていく。そのひとつを押し続けると、その時点の位置に留まる。ポインタで動かすことはできず、指を離しても元の流れには戻らない。残された文字はなお読むことができるが、その瞬間から、筆画でできた境界でもある。
あとから通り過ぎる語は、この境界を避けては通らない。境界と交わる筆画は切り取られ、保存された字形の内部に残される。残りの部分は動き続け、交差した場所を離れたあとも元には戻らない。画面にはそのため、互いに対応する二つのものが同時に残る。留まった場所に少しずつ積もっていく筆画と、なお遠ざかっていく欠けた文字である。
作品は初期状態では走り続ける。約半秒長押しすると、通過中の語をひとつ残すことができる。短く触れても状態は変わらない。R キーで同じ seed から再開し、S キーで決定論的な静止画の構図に入る。
ここで保存されるのは、目の前の内容だけではない。ひとつの語が留まる資格を得ると、それはまだ到着していない語がどんな形で通過できるかをも規定しはじめる。保存が、あとから来るものに完全性の一部を差し出させることで支払われるのだとしたら、「見届けて残す」ことは、なお無害な行為なのだろうか?