餅を返す
名寄市で記録されたある方法では、蒸し上がったもち米が臼に入れられた時点では、まだ一粒一粒の境目が見える。木の杵はまず米に沿わせるように前へ押す。粒は杵頭の両側へ散り、臼の壁に当たり、また集まりつつある部分へ押し戻される。向きを変えて、同じように押しつける。ばらばらだった粒はしだいに一つの塊につながり、杵頭を離すころには、粘りついた米が持ち上がり、臼の壁にも、次に杵が落ちる位置へ戻らなかった部分が残る。このあとの一打ごとに、新しい場所へ落とす必要があり、米の塊も別の面で力を受けなければならない。
縁に残った米は、杵の下へ返す必要がある。ある木臼の作業案内では、二つのリズムが認められている。一打ごとに返してもよいし、木の杵を数回続けて落としたあと、完全に止めてもよい。そのとき初めて、もう一人の手が臼の中に入り、縁に粘りついた部分を中央へ折り返し、米の塊を裏返す。次の一巡のつきは、返されたその面から始まる。二人の動きがずれたら、返し手は手を引き、声を出し、やり直すべきだ。木の杵がふたたび確実に止まってから、臼の中へ入る。手がその一瞬に間に合わなければ、米は元の場所に残ったままだ。木の杵が止まって初めて、それを次の一打が落ちる場所へ置き直すことができる。
縁の米は、別の器具によって戻すこともできる。ある和菓子店で使われていた装置では臼の底が回転し、角のある構造が回るにつれて米を杵の下へ送るため、作業者は杵が落ちる合間に熱い米へ触れる必要がない。寄せ戻す動きは容器の底で連続して起こり、杵はなお上から落ちる。
返された米は、もう一度力を受けることができ、まとまりも続いていく。けれども、つきが限度を超えると、米の塊の弾力は落ちていく。